大阪府のウラナミジャノメの現状を調査したところ,八尾市高安地区においてはまだ健在であったが,2010年3月28日に完成した農免農道による乾燥化で,今後は危機的状況に陥る可能性があり,現実に一日あたりの目撃数は減少している.幼虫調査により,アゼナルコスゲが食草であることがわかり,生息には湧水起源の湿地(と攪乱)が必要であるようだ.この地域特有の地形・地質・歴史により保全されてきたと思われる.住民参加によるコモンズとしての湧水・溜池の維持が保全において重要と考えられる.大阪府における最後の生息地であり,ヒメボタルの生息地でもあるこの地域の環境保全を各関係団体が推進する必要があろう.また里山の保全のためには,農道整備における環境評価が必要と思われる.
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