わが国においては, 中世以降, 優れた名所・観光地が三景, 八景, 十二景, 百景等として定数 (名数) で選定されてきた。この全国レベルで選定された定数の名所・観光地とこれに準じる箇所を瀬戸内海について調べ, その選定の意図・背景, 位置, 景観, 新出箇所の特徴を分析し, 瀬戸内海における定数名所・観光地等の変遷を考察した。意図・背景については志向性の変位として, 位置は近畿, 中国, 四国, 九州の間の変化として, 景観は自然景観と人文景観の変化として, 新出箇所は新出率の問題として, 変遷を論じた。なお, 古代において瀬戸内海の各地を最初に名所化した万葉集も, 本論の変遷の考察に有効な前提として, その地名等を調べ論じた。
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