水溶性の
p-スルホナトカリックス[
n]アレーンイオン(
n =6,H
6L6
6-,
n =8,H
8L8
8-)とメチルトリオクチルアンモニウムイオン,MTA
+,の脂溶性イオン会合体,MTA-L6あるいはMTA-L8を担持したシリカゲル粒子を調製し,金属イオンの吸着特性を検討した.あらかじめ,これらのカリックスアレーンイオンをUO
22+やTi
4+錯体とした後,MTA
+との脂溶性イオン会合錯体としてシリカゲル粒子に担持し,その後酸処理により金属イオンを脱離した錯体型の(C)MTA-L6あるいは(C)MTA-L8吸着体はどちらもUO
22+やBa
2+に対して大きな選択吸着性を示した.また,イオン会合体として担持されているカリックスアレーンの保持状態も安定であった.これに対して,遊離のカリックスアレーンイオンのMTA
+会合体を担持した,配位子型の(F)MTA-L6あるいは(F)MTA-L8吸着体は金属イオン吸着性がほとんどないだけでなく,UO
22+水溶液中では会合体の溶出が起こり,カリックスアレーンの保持状態が相対的に不安定であった.このような調製方法の違いにより生ずる吸着性の差異は,金属錯体を経由して調製された錯体型吸着体中では,カリックスアレーンイオンの水酸基群が金属イオンを捕捉するのに都合の良いコーン型などの立体配座で担持されているのに対して,遊離のカリックスアレーンイオンのMTA
+会合体を担持した配位子型吸着体中では,カリックスアレーンの水酸基群が互いに逆向きに配置した種々の立体配座に固定されており,金属イオンと錯体を形成できないため生ずると推定された.
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