日本においては経験年数を問わず少なからずの教員が授業中の子どもによる私語に対する指導に困難を感じているようである。本研究ではまず,学習理論に基づいた私語指導6指針の有用性について,中学校の授業観察を元に考察した。授業中の問題行動が目立っていた中学生8人による私語と,それらに対しての4人の教師による制止を観察し量的に比較した。結果は,6指針のうち4指針(その制止が十分な強度を持つこと,その制止が私語発生直後にすること,その制止が全ての私語に対しすること,私語の動機づけを弱めておくこと)が子どもによる授業中の私語を低減する上で有用であることを示唆するものであった。続いて,指導経験の浅い第一執筆者がこれら4指針に基づいた方策を同一中学校クラスの授業内で実施し,私語が抑制されたことを確認した。これらの結果は,4指針が教師の経験年数に関わらず私語指導の指針として有用である可能性を示唆する。
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