多くの土壤学者が禹貢にかんする記述を4,000年前の事実と考えている点を修正し,かつその内容を土壤学的立場より掘りさげるために本研究を行い,禹貢中に東洋における土壤学(土壤形態学・分類学・土地価・土壤地理学など)の萌芽をみとめた。1.禹貢の記述は紀元前4〜3世紀の戦国時代の作で当時の地理学的知識をもとにして夏初の時代を推定したものである。このことは多くの専門家によってあきらかにされた。2.土壤の記述中色・手ザワリ・構造・土性等の形態学的概念が萌芽的の形でみとめられた。各州の地理的記載と土壤の性質とを考えあわせた土壤地理学的な端初的記述がみとめられた。また土地生産力と地代の等級をしめした原初的地力評価の概念も指摘される。ここれらは萌芽的とはいえ,ローマのVirgilやColumelleの記載に先立つこと300〜400年で東洋における土壤学の萌芽とみられる。
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