兵庫県宍粟市一宮町中坪集落を事例として,人々の生活に森林を含む地域資源が多く使われていた時代の土地及び資源の利用状況を明らかにするため,文献資料による調査及び住民への聞き取り調査を行った。その結果,かつては定期的な利用と集落レベルでの管理によって地域内資源が持続的に利用されていたことがわかった。またその利用される土地は,大きく耕作地・宅地・山林・草場に区分できた。しかし,1930年代初期に集落が利用する土地面積の約50%を占めていた広葉樹林や,同じく約40%を占めていた草場は,1995年にはそれぞれ約9%,約4%へと急速に減少していた。その減少分の多くが1960年代に行われた拡大造林により針葉樹林へと変化したことが分かった。これらの結果から,1960年代以前の中坪集落では地域住民の日常的な利用と管理による薪炭林や草場,カヤ場などが存在し,維持されていたが,その後,電気,ガスの導入や農耕牛に代わる耕作機の導入などで薪炭や草の需要が減少してその景観が大きく変化したことが分かった。
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