農村の高齢化・過疎化が進む中、農家と消費者をつなぐコミュニティの活性化が期待される。しかし、消費者との接点を作れる農家は未だ限定的である。本研究の目的は、農家にとって手間のかからない無人販売所を、高校生によって、農家と消費者をつなげるコミュニケーションを誘発する取り組みとしてデザインし直し、制作・運営を実施することが、高校生に与える教育効果を評価することである。評価対象となる
群馬県立伊勢崎商業高等学校
の商業研究部の生徒(以下、高校生)は、農家と協働作業をしながら無人販売所を制作し、3回の出店および運営を行った。高校生は出店毎に、消費者にアンケート調査を行い、次回への評価・改善の参考とした。これらの活動の教育効果の評価については、高校生、農家、担当教諭に対するアンケート調査とインタビュー調査を行った。その結果、高校生には①農家の思いや考え、農業、②デザインやストーリーパネルの制作、③様々な人とのコミュニケーション、④課題解決、についての学びがあったことが明らかになった。また高校生は制作・運営を通して、農家や消費者から、学びの実践や自らの考えが反映された制作物に対する反応を得ていた。学びや反応を実感した高校生たちの意識・意欲に、①農家や地域への貢献意識の高まり、②表現することの楽しさの実感、③コミュニケーションに対する積極性の高まり、④課題解決に対する意欲の高まり、などの変化が引き起こされていることが明らかになった。
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