江戸中期に活躍した高遊外(売茶翁)は禅という宗教的雰囲気を背景に、文人茶(煎茶)の第一期を成立させたとすれば、秋成はそうした宗教的背景をもたずに、生活により密着した形で文人茶の第二期の代表となったこと。それは都賀庭鐘を通じて、大枝流芳の『青湾茶話』を引きつぎそれを発展させたものであること。秋成の『清風瑣言』の特色を「文雅養性の技事」において文人と煎茶との密接な関係を作る上で重要な位地を占めたこと。そこに茶論としてよりは秋成らしさの特徴をみていったこと。ただ『清風瑣言』はまだ「自在の茶」の境地にまでは達せず、晩年の『茶〓酔言』にいたって、「寒酸の士」としての自覚が深まり「自在の茶」の境地に達したこと。それがさらに幻想化されて『茶神の物語』を生んでいったこと。この三つの代表作の文体的特色を追究したこと、などが要旨である。
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