症例は75歳の女性. 腹部手術の既往はない-腹痛と嘔吐が突然出現し, 腸閉塞の診断で近医入院. 保存的治療後, 当院に転院した. イレウスチューブにより症状改善したため経口摂取開始したが, 右股関節痛そして発熱, 右大腿の発赤腫脹が出現. 皮下膿瘍をみたため, 右大腿部の切開排膿を行った. しかし, 切開口より便臭を伴う膿の排出が続き, 周辺は皮膚から筋膜まで壊死に陥った. 瘻孔造影にて小腸内腔に造影剤の流入が認められた. 右大腿ヘルニアの小腸嵌頓による腸閉塞および小腸壊死による大腿管からの小腸瘻と診断し, 手術を施行した. 回腸壁の一部が, 大腿管に嵌頓し, 穿孔を起こしており, 回腸部分切除術を行った. 右大腿部は壊死性筋膜炎の状態でデブリードマンを行った. 以上, 大腿ヘルニアのRichterヘルニアは局所所見が乏しいため診断が遅れやすく, 腹部手術既往のない腸閉塞には考慮すべき疾患と考えられた.
抄録全体を表示