西野範夫の思想と平成10年改定学習指導要領との関連を検討した。西野は教科調査官になって以来,一貫して美術教育における外的基準を子どもの内発的基準に変換する主張をした。上越教育大学教授になると,それを現代思想で補強した学校教育論へと拡大した。同時に文体の難解さも増した。西野は平成10年度改定学習指導要領の編成会合で主査として議論を主導した。板良敷教科調査官に運営を任せたが,「解説」編集では協力員に西野の理念を確認させている。西野の学校と生活を一体化させる意思は,学校や教育目標・内容・方法の外部性を否定して,公教育での権力の自己限定の原則に逆行する懸念もある。西野の思想的基底には霜田静志とニイル,思想的根源として浄土真宗的感性があることを指摘した。ただその児童絶対の姿勢は,浄土真宗本来の他力ではなく自力思想に逆転する懸念があることも指摘した。
抄録全体を表示