ひだ変成岩のだいぶぶんは,石灰質片麻岩(透輝石片麻岩・角閃石片麻岩)である.そして,場所によっては,黒雲母片麻岩と角閃岩がみられる.本論文では,富山県婦負郡大長谷村の庵谷-大谷地域でみられる広域変成作用と
花崗岩化作用
の特徴が論じられた.
Ⅰ 広域変成作用の特徴
a. 角閃岩の起源
残留斜長石にC-twinの多いことから,角閃岩が塩基性凝灰岩ないし火山岩から山来したものと推定される
b. 堆積岩源片麻岩の起源
透輝石片麻岩は,石灰質珪岩ないし珪質自雲岩が原岩であり,黒雲母片麻岩は,珪質粘土岩が原岩である.なお,角閃石片麻岩の原岩は,透輝石片麻岩の原岩にほぼ類似するが,ややアルミニウムに富む.
透輝石片麻岩と角閃石片麻岩では,透輝石−カリ長石という鉱物組合せが角閃岩相で安定に存在する.このことから,広域変成作用の特徴として,水蒸気圧が低く,炭酸がスの分圧が高かったと推定される.ただし,黒雲母片麻岩に作用した条件は,この逆である.
Ⅱ 花崗岩作用の特徴
花崗岩化作用
は,角閃岩の
花崗岩化作用と堆積岩源片麻岩の花崗岩化作用
に大区分され,さらに,次のように小区分された.
1. 角閃岩の
花崗岩化作用
角閃岩−星雲状片麻岩−庵谷紅色花崗岩
角閃岩−斑状変晶片麻岩−庵谷紅色花崗岩
2. 堆穫岩源片麻岩の
花崗岩化作用
透輝石片麻岩−大谷灰色花崗岩
角閃石片麻岩−大谷灰色花崗岩
黒雲母片麻岩−大谷灰色花崗岩
a. 角閃の花岩崗岩化作用
角閃岩の
花崗岩化作用
に,二つの差異が生じた原因は,化学的条件によるもの ではなく,おもに物理的条件によるものである.差動運動の有無が主要な原因である.しかし,最終的には,紅色花崗岩の形成をもって,
花崗岩化作用
がおわる.
b. 堆積岩源片麻岩の
花崗岩化作用
堆積岩源片麻岩の
花崗岩化作用
では,原岩に化学成分上の要因が充分なばあいには,直接,灰色花崗岩が形成される例を示した,従来,たとえば,透輝石片麻岩−角閃石片麻岩−無雲母片麻岩−混成岩−花崗岩という漸進的な
花崗岩化作用
が考えられているが,本論文では,これに対立した考えを提示した.
最終的に形成された庵谷紅色花崗岩は,大谷灰色花崗岩よりも流動性に富んでいる.これは,WYLLIE・TUTTLE(1959)の実験結果と一致する.全圧力がほぼ等しい条件下で花崗料化作用が進行するばあいには,炭酸がスの分圧が高いと考えられる堆積岩源片麻岩では,溶融の開始がおくれるからである.
以上に述べた花崗劉化作用を前提にして,岩石の化学成分の変化,造岩鉱物の化学成分と光学的性質の変化が取り扱われた.
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