2013年の「国際保健外交戦略」の策定により,国際的な保健分野の取り組みが日本の外交上の重要課題と位置付けられた.本論では,その後10年のグローバルヘルス外交の動向を俯瞰するとともに,日本における官民連携による具体的な事例やグローバルヘルス外交における主要な担い手の役割を述べ,日本のグローバルヘルス外交における官民連携の課題について考察する.
日本政府は,グローバルヘルスにおける官民連携パートナーシップを,企業は持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた取り組みを活発化させてきている.しかし,グローバルヘルス分野において,適切に官民連携パートナーシップを活用し,企業価値にまでつなげられている日本企業は多くない.政府においては,グローバルヘルス外交に精通し,国際機関等と企業を適切につなぐことを支援できる人材,企業においては,グローバルヘルス分野にかかわる国際機関等との交渉ができる人材の養成が必要である.特に,2023年の広島サミットで採択された「グローバルヘルスのためのインパクト投資」のようにグローバルヘルス分野へ民間企業からの投資を促進させるためにも,グローバルヘルス外交への理解は重要な要素であると考える.
またグローバルヘルス外交をめぐる国際的な動向が複雑化してくる中で,日本政府として,限られた政府開発援助をどの国際的な組織で活用し,グローバルヘルス分野における日本の存在感をいかに示すかは大きな課題である.グローバルヘルス外交での日本の貢献やその方向性を積極的に発信し,関心を持つ人々を広げていくことで,グローバルヘルスにおける様々なステークホルダーと効果的に協働していけると考える.
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