この報告は、シェフィールドのスティーブンソン・ブレイク社から1906年にリリースされたGrotesqueNo.9と呼ばれるサンセリフ体活字に焦点をあて、その書体デザインの特徴と、第二次世界大戦後にリバイバルした背景を明らかにすることを目的とする。 まず、サンセリフ体の分類をふまえ、Grotesque No. 9の特徴を確認した後に、そのデザイナーであるエリシャ・ペチーの略歴を概観する。次に、英国の前衛芸術家集団ヴォーティシストが刊行した『ブラスト』誌、
英国欧州航空
のロゴタイプ、英国祭の誘導サイン、イルフォード社のパッケージデザイン、ワトニーズ社のデザインマニュアルなど、Grotesque No.9が使用された作品事例に触れる。その上で、戦後の物資の不足、幾何学的なサンセリフ体活字への飽和感、効率的で読みやすいプロポーション、人間味にあふれた古風な書体への需要、19世紀様式への懐古趣味など、この活字書体がリバイバルした理由を示した。
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