ディスコミュニケーションという視点から法の現場のコミュニケーションの問題について検討した。最初にディスコミュニケーションの概念についてこれまでの諸定義を概観し、それを5つのレベルを含む多層的な概念として整理した。そのうえで、心理学を中心に、法の現場のディスコミュニケーションについて分析したわが国の研究を取り上げて、法の現場で生起するディスコミュニケーションの諸相について明らかにした。ディスコミュニケーションには誰もがなくしたいと考えるもの(要素的、記号的、情報理論的)と、少なくとも一部にはそうした意志がないもの(社会関係的、態度的)とが区別されうる。潜在したディスコミュニケーションにこそ警戒が必要であり、事後的なプロトコル分析、理解のフレームの意識化など、ディスコミュニケーションへの対応についても考えられるところを述べた。ディスコミュニケーションについての意識は、コミュニケーションにメタ的な視点を取り入れることにつながり、法の現場のコミュニケーションを理解するうえで意義があることと考えられる。
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