我々は臨床において効果的な聴覚減痛法を応用して,小児へのアブローチを行うためにお伽話に着目した.即ち,お伽話を介在にして,小児・保護者・術者の三者間のコミュニケーションを図り,家庭から診療室へ身構える事なく来院できるような状況に設定した後,診療室内で聴覚減痛法を行った.そして,3歳以上7歳未満の小児50名,保護者50名,術者延べ50名に質問調査を行うとともに,4歳以上7歳未満の小児13名を対象に,指尖容積脈波(PL),呼吸曲線(RC),皮膚電気反射(GSR)の3指標において小児の情動反応の観察・記録を行い,以下のような結果を得た.
1)保護者へのアンケートにおいて,「治療時にお伽話を聞ける事を楽しみにしていた」と回答した者は,49名中36名(73.5%),「来院に積極性がでてきた」と回答した者は49名中24名(49%),「今後もお伽話の使用を希望する」と回答した者は49名中45名(91.8%)であった.
2)小児へのアンケートにおいて,「お伽話を聞きながら治療を受けて気持ち良かった」と回答した者は,2回目で49名中36名(73.5%),3回目で50名中40名(80%)であった.「今後もお伽話を聞きながらの治療を希望する」と回答した者は,2回目で50名中43名(86%),3回目で50名中45名(90%)であった.
3)術者へのアンケートにおいて,「治療がやり易くなった」と回答した者は,2回目で47名中21名(44.7%),3回目で50名中28名(56%)であった.「小児の不安・恐怖感は減じた」と判断した者は,2回目で49名中30名(61.2%),3回目で50名中32名(64%)であった.
4)エンジン刺激では,2回目・3回目において初回に比して情動反応の減少を示し,5%の危険率で有意差を認めた.
5)タービン刺激では,各回毎に情動反応の減少傾向を示した.
6)泣き声刺激では,各回毎に情動反応の減少を示し,3回目において初回との間で1%の危険率で有意差を認めた.
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