俊乗房重源が平重盛息である土佐守宗実を救うという宗実説話は、史実的であるとは言いがたい。延慶本系統には「宗実が生蓮房と名乗った」とある。『東大寺衆徒参詣伊勢大神宮記』には、重源の弟子の生蓮という僧の夢想譚があるが、この生蓮が宗実でないことは史実から明らかである。しかし、この夢想譚の「生蓮」に対する認識が、後世、変化してゆく点に着目し、生蓮夢想譚の「生蓮」と土佐守宗実が、重源の存在によって結びつけられてゆく過程を考察する。
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