スフィンゴ脂質、コレステロール等の脂質は、神経細胞を外界から守るバリアーとして、また種々の神経機能発現の細胞膜上のドメインとして機能している。こうした糖脂質が、ヒト神経疾患で炎症反応への情報伝達分子としてどう機能しているのかその実態は不明である。我々はラクトシルセラミド(LacCer)等の中性糖脂質を認識する未知の自己抗体が、中枢・末梢両神経系に重篤な「神経炎症」が起きる脳脊髄根末梢神経炎(EMRN)患者に存在し、本抗体が自然免疫の主要な役者となっている可能性を見出した。本稿では、各糖脂質の免疫学的性状や抗中性糖脂質抗体の免疫学的性状・作用について、現時点での理解と今後の展開について考察を加えたい。
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