本稿では,1948年少年法の保護原理の言説化過程を検討しつつ,その影に埋もれ,言説化されなかった戦前少年保護実務家の1948年少年法制をめぐる「語り」を明らかにし,今後の少年司法政策への示唆を得ることを目的とする . 先ず,戦後直後の少年法解説書等で描かれる少年法像を検討し,そこでは新しい少年法の構造が強調され,児童憲章制定等の動きも受けながら,少年の権利を尊重して健全な育成を図るべく,家庭裁判所先議で関連機関との連携を通じたケース・ワーク機能を重視する保護原理が言説化されたことを確認した.次に,戦前少年保護実務家の1948年少年法をめぐる「語り」を検討し,保護の決定と執行が分離し,各機関相互の人事異動が消滅したため,いかに各機関の役割を理解しながら連携を図り,更生を支える社会資源を開拓するかが課題とされていたことを確認した.最後に,戦前・戦後,一貫して少年司法機関と関連機関との連携が求められ,現在も多機関連携等が叫ばれる中,それをいかに具現化するか,戦前少年保護実務家の「語り」は問いかけていると指摘した.
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