犬山地域に分布する美濃-丹波帯のコヒーレントなチャート・砕屑岩ユニット(犬山シーケンス)には, 付加に伴って形成されたさまざまなタイプのスラストが発達している.これらの剪断帯の特徴とスリップ方向を南北3kmの木曽川沿いのルートで検討した.観察したスラストは20本であり, うち19本は断層条線, 残り1つはデュープレックスのファブリックからスリップ軌跡を求め, 非対称変形構造に基づいてスリップセンスを決定した.スラスト以外の縦走系断層として, 左横ずれ断層が認められるが, 断層条線の方位や剪断帯の特徴の相違からスラストと区別できる.スラストのスリップ方向の平均値は, 褶曲・傾動の補正後, N60°E-S60°Wの地層の一般走向に直行するS30°Eを示す.西南日本のアジア大陸からの回転変位と大規模屈曲構造を復元した際に, このスリップ方向は, ジュラ紀最後期~白亜紀最初期にかけてアジア大陸下に直交方向に沈み込んだイザナギプレートの相対運動方向にほぼ平行である.
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