低金利環境の継続による収益力の低下と人口減少に伴う顧客基盤の縮小をうけて、地方銀行はこれまで以上に効率的な経営を求められるようになり、こうしたもとで、ここ数年、合併や経営統合の動きが進展してきた。このことを踏まえ、本稿では2004年度から2018年度までの期間を対象に、地方銀行各行のデータを利用して、合併と経営統合が収益力の向上と経費節減にどのような効果をもたらしたのかについて実証分析を行う。パネルデータを利用した推定によれば、(1)持ち株会社方式による経営統合については、統合後に経費率(コアOHR)の低下と収益率(コアROA)の上昇がみられ、経営統合に一定の効果があることが認められること、(2)合併については明確な効率化の効果がみられず、むしろ合併前にコアOHRの上昇が生じていること、(3)経営統合の効果は経費の節減によるものであることなどが確認された。地方銀行の経営の効率化については、合併だけでなく幅広い選択肢のもとで、収益力の向上と経費節減に向けた取り組みが進められていくことが望まれる。
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