台湾南西部にある菜寮とその周辺地域は,台湾の陸上で最も重要な第四紀哺乳類化石産地である.そこからは,かつて台湾の中では特に古いものとされ「左鎮人」と呼ばれた人類化石も報告されている.哺乳類化石は,主に崎頂層と呼ばれる海成の泥岩・砂岩層から産出し,この層の時代は前期更新世後期~中期更新世である(主に中期更新世).本論文では,この地域の化石や化石産出層についての研究史を総括するとともに,これまでの研究で得られた成果を筆者らによる野外調査の結果や化石の観察,他地域の動物群との比較にもとづいて,筆者ら独自の視点でまとめる.また,この地域における化石の産状とその収集・保管,産出層の層序・年代,他地域の動物群との比較について問題点を指摘し,さらに各問題点について今後の展望を述べる.
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