方向指示型ドプラ法を用いて, 心, 肺, 血管系に異常を有さない15歳から75歳に至る正常血圧者 (150/90mmHg未満) 58例 (男42例, 女16例, 平均年齢43.9歳) を対象として各動脈部位 (右側総頸, 上腕, 橈骨, 大腿, 足背動脈) の血流パターンを記録し, その加齢による変化について検討し, 次の結果を得た.
(1) peak velocity (forward flow) に関しては, 総頸, 上腕, 橈骨, 大腿各動脈にて加齢とともに低下傾向にあった. 特に, 総頸動脈において他の各動脈部位に比し velocity の低下が著明であった.
(2) inclination of first forward flow に関しても, (1) と同様の結果を得た.
(3) appearance time に関しては, 上腕, 橈骨, 大腿, 足背各動脈にて加齢とともに短縮傾向にあったが, 総頸動脈にては年齢との間に一定の傾向は認めなかった.
(4) 総頸, 上腕, 橈骨各動脈における収縮中期逆流相は若年者でしばしば認められるが, 40歳, 特に, 50歳以上の老年者ではほとんど認められなかった. また, その velocity は加齢とともに低下傾向にあった.
大腿動脈における収縮後期-拡張早期間逆流相は全症例に認められ, かつ, その velocity は加齢とともに低下傾向にあった.
(5) 各波高比に関しては, 加齢とともに総頸動脈にてS
2/S
1, I/S
1, D/S
1 d/S
1の大なる傾向, D/S
2の小なる傾向, 上腕, 橈骨動脈におけるS
2/S
1の大なる傾向, 大腿動脈のR/S, D/Sの小なる傾向を認めた.
以上の結果は心臓血管系の老化の指標として超音波ドプラ法による血流パターンが応用されうる可能性を示唆するものと考えられた.
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