近年,戦後と比較して美術科の授業時数は減少傾向にある。これに伴い,以前に比べ授業で多種多様な表現や鑑賞の体験をさせることが困難になってきている。だが,一つの題材内で主題を深く考えることを通して,様々な取り組みを関連付けながら工夫すれば,比較的短時間であっても多角的な視野からのアプローチが期待でき,子ども達に多くの経験をさせることが可能になるのではないだろうか。本稿でいう総合的造形表現とは,一つの題材で美術科内の幾つかの領域(絵画,彫刻,デザイン,工芸,鑑賞など)を横断しながら表現に向わせる内容のことである。具体的には,「モニュメントに託されたメッセージ〜未来へ続く私たちの塔〜」の実践において,パブリックアートとしての鑑賞,絵画的な視点からのランドスケープデザイン,彫刻や工芸,建築的視点などからのマッチの軸棒を活用したマケット制作を中学校(総7時間程度)で実践した。鑑賞をきっかけに主題を創出し,ドローイングからマケット制作を行った授業を検証するものである。
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