実験的macro-reentry性頻拍の停止機序の一つとして「旋回路の一部に出現したantidromic echowaveとorthodromic mother-waveとの衝突によるecho-wave terminatiom」が報告されているが,臨床例での報告はほとんどない.今回われわれは心房粗動(AFL)の症例において本現象と推定される停止様式を観察したので報告する.症例は75歳男性,冠動脈バイパス術後に持続性のAFLが出現したため心臓電気生理検査(EPS)を施行.EPS時,時計回転(周期235msec)と反時計回転(ccw)のAFLが誘発され,ともに心房頻回刺激による停止が可能であった.ccw AFL(周期230msec)に対し冠静脈洞近位部から周期190msecのペーシングを行ったところ,ペーシング中止後に3拍のAFLの旋回が見られた後,4拍目にて頻拍が停止した.停止様式を分析するとseptal isthmusにおいてWenckebach型伝導遅延が起こり,伝導遅延が臨界値に達した後antidromicecho-wave(daughter-wave)を生じたと推察された.生じたecho-waveは時計方向に伝導し,反時計方向のorthodromic mother-waveと衝突することによりAFLが停止した可能性が考えられた.
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