本論文では微分不可能な関数を含む非線形方程式系の求解問題を取り扱う.このような問題は,例えば,相補性問題や変分不等式問題などから生じることが知られている. 平滑化ニュートン法は微分不可能な関数を含む非線形方程式系に対する効果的な反復法としてよく知られているが,行列を保存する必要があるため大規模な問題に対しては必ずしも有効とは限らない.一方,無制約最適化問題に対する共役勾配法は行列を保存しなくてもよいため,大規模問題に対する解法として知られており,中でも自動的に降下方向を生成するようなスケーリング共役勾配法が近年注目されている. 本論文では,微分不可能な関数を含む方程式系に対して平滑化手法とスケーリング共役勾配法を組み合わせて,行列を陽に使用しないような数値解法を提案し,その大域的収束性を証明する.
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