乳中切歯, 乳側切歯ならびに過剰乳歯の3歯が融合した, まれな症例を経験した。
患者は6歳4カ月の女児で, 下顎乳切歯の動揺を主訴に来院。口腔内診査により, 結合して一塊となった上顎乳中切歯, 乳側切歯, 過剰乳歯がみられた。口腔内X線写真では, 左側乳中切歯と乳側切歯の後続永久歯が認められたが, 過剰永久歯はみられなかった。これらの歯根吸収は½以上におよんでいた。一塊となった乳中切歯と乳側切歯ならびに過剰乳歯は, 後続永久歯の萌出を障害すると思われたので, 局所麻酔下で抜歯した。抜去歯の肉眼所見では, 3歯の結合部の唇舌面に, 歯頚部に達する明瞭な縦走溝がみられた。抜去歯の軟X線写真では, 冠部歯髄と根部歯髄はそれぞれ独立していた。抜去歯の研磨標本による観察にて, 3歯は象牙質で結合していることが確認された。
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