われわれは不必要な頸部郭清を施行しないことを目的として,早期口腔扁平上皮癌N0症例に対してセンチネルリンパ節生検法を用いて頸部リンパ節転移の有無を診断した。
(方法)2007年から2013年までに当科において臨床病期がI期もしくはII期口腔扁平上皮癌患者38症例のうち2年以上の経過観察が可能であった38症例を対象とした。SLNの同定法としては,手術前日にRIを注入後シンチグラフィーにてSLNの位置と個数の目安を決定し,手術当日はガンマプローブを使用しSLNを同定摘出し,術中迅速病理診断により転移の有無を確定させた。術後の経過観察は,CT,MRI,US,PET-CTによる定期的な画像診断と視診,触診によって行われた。
(結果)SLN同定率は100%であった。SNBが陽性であった症例は4/38例(10.5%)であり根治的頸部郭清術が施行された。SNBが陰性であった症例は34/38例(89.5%)であり原発巣のみ切除された。局所再発を認めた症例は6/38症例(15.7%)であった。局所再発を認めなかった症例は32症例で,そのうち4症例に後発リンパ節転移を認めた。5年全生存率はSNB陽性症例で75%,SNB陰性症例 89.3%であった。
(結論)口腔扁平上皮癌においてセンチネルリンパ節生検は,不必要な頸部郭清を回避するのに有用である。
抄録全体を表示