本研究の目的は, 日本の伝統芸能を学校教育の中で体験的に学ぶ可能性とその課題を探ることにある。本研究では, 足利南高等学校で行われた歌舞伎授業の調査を行った。また, 伝統芸能を学校教育の中で学ぶ際の学習効果と問題点について7人の学校教員, 9人の伝統芸能実演家, 6人の研究者・学識経験者への聞き取り調査を行った。
調査結果より日本の伝統芸能を学ぶことによって, 生徒が日本文化全体に興味をもつようになる学習効果が確認された。しかし, 授業の開講にはいくつかの大きな問題が存在することが明らかとなった。第一に金銭的な問題, 第二に学校教員にとって指導者として協力をしてくれる実演家を探すことが困難な問題, 第三にこれらの特別な授業カリキュラムを作成しにくい問題である。今後これらを解決するためには, 金銭面, 実演家の窓口, 授業カリキュラム作成について援助をする公的な機関の存在が必要であることが考えられる。
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