本稿は,興福寺
阿修羅
像の鑑賞教育事例を考察し,それを踏まえて仏像一般の鑑賞教育方法の体系を試みるものである。仏像がもつ性格を信仰対象,彫刻作品,文化財の三つに整理し,それらに基づく七つの類型に仏像鑑賞授業における目的,内容,方法と同像がもつ要素を分類した。そして同像鑑賞授業の三本の円柱型からなる構造を確認し,仏像鑑賞教育を体系化した。そしてそれに分析した実践事例を照らし合わせ,仏像鑑賞授業の構想及び分析における有効性を確認した。また,仏像鑑賞教育がもつ可能性として,極彩色の姿を扱う鑑賞授業,形相や持物の差異を扱う鑑賞授業,安置状況の差異を扱う鑑賞授業の形を提案した。現在の姿とは異なる造像当時の姿を授業において扱うことで,より広がりと深みをもつ鑑賞教育を実践することができる可能性を示した。
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