HBワクチンの乳幼児におけるHBs抗体反応の持続と, 追加接種および感染防御効果について検討した.
HBe抗原陽性の園児が存在する保育園の園児 (0-5歳) で, HBs抗原, HBs抗体およびHBc抗体が陰性の496名を対象とした. このうち243名にヒト血漿HBワクチン10 μgを皮下に3回 (初回, 1, 6ヵ月後) 接種した. 接種しなかった253名をコントロールとした. また, 初回接種後36ヵ月に調査できた94名に追加接種として, 組換えHBワクチン2 μgを皮内に投与した. ワクチン接種群は接種前, 接種後1, 6, 9, 12, 24, 36, 38ヵ月に, 非接種群は0, 1, 2, 24ヵ月に採血した.
HBs抗体陽転率は9ヵ月 (3回接種後) で82.3%と最も増加したが, その後減少傾向を示し, 36ヵ月で66.0%となった. また, HBs抗体価も9ヵ月で最も高くなり, 2
7倍 (PHA法) 以上のhigh responseが44.4%と最も増加した. しかし, その後減少傾向を示し, 36ヵ月で7.4%となった.
以上のように, 36ヵ月ではHBs抗体反応の低下がみられたが, 追加接種により抗体陽転率は84%と増加し, 抗体価の上昇もみられ, high responseが29.3%に増加していた.
ワクチン非接種群では24ヵ月までに9名のHBV感染者がみられたが, 接種群では36ヵ月まで1名も感染しておらず, ワクチンによるHBV感染防御効果がみとめられた.
ワクチン接種後36ヵ月では免疫原性の低下がみられたが, 追加接種によりHBs抗体反応の上昇がみられた. その際, 追加接種として皮内接種でも有効であり, またヒト血漿HBワクチンと組換えHBワクチンの間に交叉性免疫が存在することも示唆された.
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