伊那谷南部の飯田-松川断層の変位地形・地質の調査により, この断層は第四紀以前に形成され, 第四紀後期の最近の2万年以降にも活動している活動度IのA級活断層であることが明らかにされた.この断層沿いに木曽山脈の稜線が約2 kmの左横ずれ, 約500 mの南側下がりに変位した断層地形が認められる.また, 断層沿いに山間部の河谷の系統的な左横ずれが認められ, 大略において屈曲量(D)と屈曲した河谷の上流の長さ(L)との間にD=aLの関係が満されている.河谷の屈曲率(a=0.08~0.3)およびAT火山灰を含む段丘面の変位量から推定される左横ずれ変位速度は約1 m/10
3年である.さらに, 断層岩の組織構造を解析した結果, 飯田-松川断層は正断層成分を持つ左横ずれ断層であること, 水平方向と鉛直方向の変位量の比率は3~4 : 1であること, 第四紀以前から第四紀後期にかけて断層は一貫して同じ変位センスで活動してきたことが示される。
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