本稿は,過疎に直面する長野県下高井郡木島平村糠千地区において展開する地域と大学の連携した地域づくりの現状と課題を,地域づくりに関わる各主体の取り組みの来歴や住民の参加状況,主体間の連携のあり方を検討することから明らかにするものである。木島平村では,1980年代後半から地域住民を中心に,その他に行政や大学などが主体となって様々な取り組みが実施されてきた。そして2010年に農村文明塾が各主体の連携を目的に設立され,住民が学生を受け入れるコンソーシアム事業を軸として3主体は連携を展開してきた。こうした連携事業に対して住民から肯定的意見が聞かれる一方で,取り組みの実施自体が目的化されることを危惧する意見も出ている。今後の課題としては地域づくり全体における実施される各事業の位置づけや,各成果とそれに至るプロセスの可視化を通じて,将来像を考えていくことが求められるといえる。
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