目 的
中国出身の母親の産後4か月間の母国と異なる文化の生活における体験と思いを明らかにし,日本で育児を行う中国出身の母親独自の価値観や生活・行動様式,考えなどを生かした支援のあり方の手がかりを得る。
方 法
半構造的面接により,2名の中国出身の母親から産後4か月間の体験や思いに関する語りを得て,事例研究法を用いて分析した。また,2名の研究参加者の母親へ故郷の離乳の実態に関する質問紙調査を行った。
結 果
A氏は,中国人の夫や実母から手厚い支援を得て,授乳中心の育児に専念していた。また,市町村の社会資源,友人や親族の支援を多く活用し,育児情報源は豊富であった。B氏は,日本人の夫と産後の支援について意見が一致しないまま育児期を迎え,身近な相談者はおらず,情緒面への影響がみられた。
両者はともに,妊娠期から母乳育児を希望し,食事や身体の保温に配慮し,産後1か月までに母乳育児を確立した。また,月齢1か月以降の児の沐浴,言語習得に困難や不安があった。
考 察
中国出身の母親は,中国文化特有の強固な家族支援の有無に関わらず,産後4か月間においてそれぞれに困難や不安があった。中国特有の出産・育児文化を念頭に置き,母国と異なる文化で育児を行う中国出身の母親の困難や不安を予測し,適切な時期に情報や支援を提供し,母子の孤立を予防する必要性が示唆された。
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