子どもの誕生に伴い変化する父親と母親の心理的特性を 「親性」 (Parenthood) (鮫島,1998) と概念規定した上で,「親性」 尺度の作成と 「親性」 の因子構造を明らかにすることを目的に,妻が妊娠中期の父親 (n=114) と妊娠中期の母親 (n=114) を対象に調査を行った。
36項目の刺激語を使用し,自分自身のイメージについて5段階評定を得た。 素点を因子分析 (主因子法,バリマックス回転) し,5因子を抽出した。 その中で,親に関する3因子 (F1;活動・養育因子,F2;献身・慈しみ因子,F3;権威・厳しさ因子) を 「親性」 尺度に採用した。
各因子毎に素点を用いて分析した結果,F1;活動・養育因子は,性差ではなく各々の夫婦間の性役割のあり方によって規定される因子,F2;献身・慈しみ因子は男女ともに共通して認められる特徴であり 「養護性」 に相応する因子,F3;権威・厳しさ因子は,父親にとって“伝統的な父親像”として強く意識される因子などと考察できた。 また,F1 は役割を表すが,F2・F3 は特性を表していた。 以上の結果により,3因子の関係性は階層構造ではなく,それぞれが独立した並列関係であり,いずれもが 「親性」 を構成する下位概念であると示唆を得た。
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