本稿は朝鮮時代(1392年〜1910年)の宮殿建築技法を直接知る最後の世代である大工・裵喜漢(1907年〜1997年)の自伝『朝鮮木モックス手・裵喜漢の生涯、この朝鮮の鋸も錆びてしまった』のうち木材調達について口述している部分を取り上げ、その和訳を紹介する。韓国における現存する宮殿や上流階級住宅などの最高級建築に使われる木材は松材が主流である。紹介する口伝書は、主に1920年〜1980年までの間、韓国国内で最良の建築木材と評される松材の伐木、流筏を用いた運搬、運搬された木材の製材がどのように行われていたのか、大工の立場からその実情を具体的に述べている。
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