神戸市は開港140周年にあたる2007年、芸術文化の更なる振興と街の賑わいや活性化につなげる新たな試みとして「神戸ビエンナーレ」を開催した。この芸術祭は、神戸のまちづくりに地域の文化力を活用することを念頭におきつつ、芸術または芸術祭、まちづくりまたはひとづくりへの問いかけに端を発し、「文化創生都市」をめざして実施したプロジェクトである。そのために、「アート」を「地域」概念の再評価から、「地域」を「アート」活動の再認識から創生することを目的としている。従って、「神戸ビエンナーレ」は、世界各地で開催される主要な現代美術展と連動する形式を目指さず、神戸の都市イメージと芸術文化の創生を「神戸らしさ」の再認識・再評価からはじめる新しいスタイルの総合芸術祭を試みた。そこで本稿において、神戸の芸術文化の特性を鑑みながら、このアートプロジェクトへ向けて掲げていた幾つかの開催理念を検証しつつ、神戸ビエンナーレ事業の経緯を含め、種々の実施事項とその結果を検証しておきたい。
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