カロチンは生体内に通常みられる色素であるが,動物体内では合成されず,もっぱら食物からの摂取によっている.臨床的には,カロチン含有物の過剰摂取による柑皮症は良くみられるが,問題となることは少ない.
我々はカロチン血中停滞が著明で,精神神経症状を呈した症例を経験し,これについて肝の電顕的観察を行った.Disse腔はreticulum fiberが軽度に増生し,mitochondriaは腫大,変形とmatrixの電子密度の増加を認め,paracrystalline inclusionの出現を認めた.また,滑面小胞体は発達し,細分化し,小円形状となり,内腔に小顆粒を認め,粗面小胞体は層状構造が乱れ,細分化し,内腔の拡大を認めた.発達したGolgi装置は内腔に小顆粒を認めた.
以上の電顕的にみた細胞内小器官の変化により,本症の色素停滞の一部を解明することができるものと考え,また体質性黄疸との関連についても考察した.
抄録全体を表示