1944年東南海地震(M
J=7.9)の被害統計資料の整理と震度分布の評価を行った。その結果従来のデータの誤りを正し集計値と整合のある市区町村データを新たに整備することができた。それらに基づいて震度分布図を作成し地域毎の揺れの特徴をわかり易く表現することができた。またそれらのデータを用いて東南海地震の人的被害の要因を検討した。合計1183名の死者数のうち、静岡県袋井市周辺や愛知県西尾市の旧矢作川流域など震度7になった地域での住家倒潰による犠牲者ならびに三重県の熊野灘沿岸のリアス式海岸地域における津波による犠牲者が多くを占めることが分かった。それに加えて愛知県半田市や名古屋市南区では揺れは震度6弱程度であったにも係らず市区町村別の死者数ランキングで1位と3位の犠牲者が出ていることが分かった。両者を合わせるとその数は279名となり、愛知県全体の435名の実に64%に当る。その原因は、耐震性の欠如を放置して飛行機組立工場へと転用された紡績工場の存在があった。このような行為は場合によって、津波にも勝るとも劣らない被害要因となることが分る。
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