多くの行政機関は多様な政策課題に直面し,限られた予算の中で効果的な事業実施が求められており,経済波及効果の測定に産業連関分析が用いられている.しかし,経済波及効果は,物価や産業間の取引依存関係が,産業連関表が作成年次の統計値に依存し,確実性を持った既知データであるとの仮定のもとで算出される.産業連関表が公的統計を中心とした作成を続ける限り,取引依存関係が固定されているといった課題の克服は困難である.そこで,我々は,民間企業が保有する企業間取引情報をもとに確率論的な要素を持った産業連関表を作成し,経済波及効果を測定するモデルを組むことで,政策現場で直面する課題に対し,より実践的な効果測定アプローチが可能となると考え,本研究に取り組んだ.なお,本研究は,東日本大震災で被った石巻市における観光損失額測定を例に,モンテカルロ法を用いた経済波及効果の測定を試みたものである.
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