本研究では, 保育現場におけるマルトリートメントについて保育者が認識する関連要因,及びマルトリートメントをしたことがある保育者が信頼関係を構築するために心がけている関わりを探索的に検討することを目的とした.経験年数の異なる6名の保育者を2グループに分け,フォーカス・グループ・インタビューを実施し,保育者の語りを質的に分析した.その結果,マルトリートメントに関する概念的カテゴリーとして【認知したマルトリートメント】【マルトリートメントのリスク要因】【保育者の予防要因】【組織の予防要因】を抽出した.信頼関係の構築に関するカテゴリーでは【基本的態度と関わり】【一人ひとりとの情緒応答的な関わり】【社会情動的発達】【保護者からの信頼】を抽出した.マルトリートメントの認知に関する語りが多いグループでは,保育者と組織の予防要因の語りが少なかった.信頼関係の構築に関するカテゴリーは,グループ間で共通していた.保育者は関係構築に向けて一人ひとりに応答的な関わりを意識しているものの,予防要因の機能不全や複数のリスクが複合することでマルトリートメントが生じ得るととらえていた.
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