中国における日本語の学習は,戦後複数回にわたってさまざまな緊張状態に置かれた日本と中国との関係を日本理解という形でつなぐ役割の一端を担うものであった。そして現在及び将来においても,日中関係を担う人材育成の重要な場であることは疑い得ない。また,突出した学習者数と,高度な日本語人材育成という量・質の両面から,中国における日本語教育は世界の日本語教育全体を牽引する立場にあるといえる。本研究は,これまで詳しく知られてこなかった国交正常化以前の中国で日本語による情報発信や交流に多大な貢献を果たした放送局・新聞社・雑誌社のアナウンサーや記者のオーラルヒストリー調査を通じて,中国の日本語教育において日本語メディアがどのような役割を果たし,それはいかにして実現したかについて考察し,両国の相互理解と文化交流の歴史の新たな側面に光を当てるものである。
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