2020年から2022年にかけて新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって空運業界の国際旅客需要が大幅に減少し,航空会社は未曾有の危機に陥った。本稿では航空会社がコロナ危機を乗り越えるために実施した経営戦略を経営資源とダイナミック・ケイパビリティの統合的視点から考察を行った。企業の危機対応能力を診断するモデルを提示したうえで,日本の大手航空会社であるANAとJALの比較事例研究を行った。分析の結果,本稿では3つの仮説を提示するとともに,両社の経営戦略の異同を明らかにした。ANAとJALは共に高いダイナミック・ケイパビリティを有しているが,ANAは特殊性の高い経営資源を用いて柔軟にコロナ危機に対応したのに対し,JALは保有する経営資源の特殊性が低いため外部資源の活用を通じて危機に対応した。
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