針葉樹人工林を天然更新により有用樹種を含む多様な広葉樹によって構成される森林へと誘導する施業法に関する研究の第一段階として,小岩井農場山林のカラマツ人工林における2つの事例について更新林分の構造を解析し,それに関わる要因について検討した。主林木本数伐採率50%の強度間伐を行い,中下層木をすべて伐採,林床植生をすべて刈り払い,枝条を除去するために重機で走行したことによって地表の落葉層が剥ぎ取られた部分が生じた牧道試験地では,処理10年後にはウダイカンバを主としてホオノキ,ミズナラ,ウワミズザクラ,ヤマグワ,アズキナシ,アカイタヤ,ミズキ,シラカンバ,ダケカンバなどが更新していた。幅20mの帯状皆伐を行い,重機による地掻きを行った白川試験地では,処理7年後にはウダイカンバを主としてシラカンバ,ミズナラ,カラマツ,アカマツ,ヤマグワなどからなる更新林分が成立していた。これらの事例は,林冠疎開と地床処理の組み合わせによってカラマツ人工林の伐採後に有用樹種を含む多様な樹種により構成される広葉樹林への誘導が可能であることを示唆している。
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