有効成分dl, d-T80アレスリンの蚊取線香の煙を走査型電子顕微鏡により観察した結果, 煙粒子は燃焼部付近では粒径0.2μm以下, 燃焼部より離れた位置では0.4∿1.0μm程度であると考えられた。またX線マイクロアナライザーによる分析より, 煙粒子上または中に有効成分が存在することが明らかとなり, 煙が有効成分拡散のためのキャリアとして働いていることが明らかとなった。一方, ガラス箱(0.34m^3)内で有効成分アレスリンの蚊取線香を燃焼させたときのアカイエカに対するノックダウン効果は, 空間内での揮散有効成分量が等しいなら, 煙量の増加に伴い低下することが認められた。また粒径0.43μm以上の煙粒子上に存在する有効成分の割合は, 空間内の煙量の増加に伴い増加することが示唆された。この煙粒子上の有効成分の存在率の増加に伴いノックダウン活性も低下することより, 線香の煙は有効成分の殺虫効果発現のさいの抑制因子となっていることが示唆された。このことより, 実用条件より高い煙密度条件で実施することの多い, 実験室での生物効力試験でのノックダウン効果の評価のさいには, 煙の影響を考慮する必要があると考えられた。
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