インドネシア,西スマトラ州の亜山地性多雨林域において,12年間のモニタリング調査から得た皆伐跡地二次林の林分構造と一次生産力の経年変化にもとづき,湿潤熱帯下での二次林の遷移過程を解析した.
二次林の構成種数は1000 m
2程度の小面積で胸高直径が5cm上を対象とした場合,30-40種程度と成熟林分の半分以下で,また数種の明瞭な優占種が存在した.それらの種は,いずれも伐採後種子から生長した二次林種であった.生体量の回復速度は土壌条件により大きく異なり,湿潤で肥沃な場所では,伐採後9年で地上部現存量が300ton ha
-1以上の回復を示した.しかし,その後急速に優占種が多数枯れ,萌芽更新型の種群や成熟林構成型種群の優占度が相対的に高まった.萌芽更新型の種では,株サイズが更新初期の生長速度と高い正の相関を示したことから,強度の伐採圧はこの種群に有利に働くことが示唆された.
二次林構成種は成熟林の構成種に比べ全体的に幹材の物理的硬度が低く,また二次林構成種間において柔らかい樹木ほど肥大生長速度が高いことが判明した.この硬度と生長速度との関係を用い,モデル計算により同一サイズで堅さの異なる樹木間での生長量を比較したところ,乾物生産量ではほとんど差がなかった.このことから,個体レベルでの潜在的生産能力には種間で大差なく,生存戦略に対応した部位に光合成産物を転流していることが示唆された.
一次生産力は植生回復の初期段階で最大値を取り,その後一定値を保つ傾向を示した.安定期の値は,隣接する成熟林と有意な差が無く,地下部を考慮するとする26~30ton ha
-1 y
-12であった.再生段階のごく初期に生産力が最大値を示す理由は,肥大成長率(RGRD)がとくに初期段階で高いことによる.このRGRDと胸高直径の関係における経年変化が,種の入れ替えなしで生じた場合と種間の入れ替えが主な原因として生じた場合の2ケースについて,幹の堅さを考慮した一次生産力の遷移過程を数学モデルを用いて考察した.
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