日本人ビートボクサー(ヒューマンビートボックスの演奏家)AFRA(藤岡章)がアメリカから帰国し、日本では 2004 年に国内初のヒューマンビートボックスの演奏家が誕生した。時を同じくして各家庭へのパーソナルコンピュータやインターネット網が普及し、YouTube に代表される動画投稿サイトの出現や、ひとり1 台がスマートフォンを持つなどのIT 環境が急速に発展した。ヒューマンビートボックスはこの変化を受け手新たな動向が見られる。 本稿ではこの変化が及ぼしたヒューマンビートボックスの概念形成への影響を把握するために、AFRA に続く日本を代表するビートボクサーやボイパの奏者(指導者)4 名へ聞き取り調査を実施した。その結果、ストリート文化という現実空間に存在していたヒューマンビートボックスは、YouTube の出現によってインターネットという仮想空間の中のみで技術が習得され演奏を楽しみ、それが視聴されるという側面ももつ音楽表現に変化していることがわかった。そして、このような変化は、これまでの音楽表現の指導者観をも変えていく可能性があり、その変化に応える新時代の指導者の出現が予見されることなどが見いだされた。
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