強い相互作用の基本粒子クォークとグルーオンは,通常はハドロン内に閉じ込められ姿を見せることはない.開闢から数マイクロ秒後までの超高温の宇宙はクォークとグルーオンが閉じ込めから解放されたクォークグルーオンプラズマ(QGP)状態であった.このQGPを実験室において実現しその性質を調べる試みが幾つかの重イオン加速器を用いて進められてきた.RHIC衝突型加速器でのこの十年の研究から,QGPは理論が予想していたようなクォークとグルーオンが自由に飛び交うガスなどではなく,地上で最も強く相互作用し,故に比粘性が最も小さなサラサラした流体であることが分かってきた.本記事では,このようなQGPにどのように迫ってきたかについて解説する.
抄録全体を表示