真核細胞の主要なheat shock protein (HSP) のひとつであるHSP
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には2つの遺伝子が存在し, それぞれに由来するアイソフォームタンパク質であるHSP
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αとHSP
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βがある。本研究ではヒトHSP
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α, βを識別する抗HSP
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モノクローナル抗体の作製を試みた。大腸菌発現ヒトHSP
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α, βを精製し, それぞれ抗原とした。免疫したマウスより33種類のモノクローナル抗体を得た。得られた33抗体について, 大腸菌発現ヒトHSP
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α, βそれぞれを抗原としたELISAおよびイムノブロットで分析した結果, 10種類のモノクローナル抗体はHSPα特異的, また3種類のモノクローナル抗体はHSPβ特異的であった。その他, HSP
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αにより強く結合するモノクローナル抗体は5種類, HSP
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βにより強く結合するモノクローナル抗体は5種類, HSP
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α, β両者に同程度結合するモノクローナル抗体は9種類存在した。なお, 1種類のモノクローナル抗体については, ELISAとイムノブロットの結果に差異が見られた。HSP
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アイソフォーム特異抗体を用いてヒト顎下腺腺癌細胞に発現しているHSP
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の検索を行い, イムノブロットの結果, HSP
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αおよびHSP
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βの両アイソフォームタンパク質が発現していることを明らかにした。さらに熱ショック条件下でHSP
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αの発現量は増加したが, HSP
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βはあまり変化しなかった。これらのHSP
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アイソフォーム特異抗体は, 両アイソフォームの機能や発現調節機構の解明に有用であると考えている。
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