酸化亜鉛感光層の樹脂混合率を変化させ, その電気的特性 (暗電流, 表面電位) を測定したところ, 興味深い現象を見い出し, その原因について解明を行なった。
感光層の表面電位 Vs および電流 I は, 樹脂混合率に対して, 単調なる曲線を描かず奇異なる曲線を示した。表面電位では 3% に極大, 20% 付近に極小が, 電流では逆に 3% に極小, 20% 付近に極大が存在し, 両者の関係は全く反対の曲線を示した。このことは従来の Vs と I との関係から考えると矛盾するような現象である。そこで次の考察を加えて, これらの現象を合理的に説明した。
表面電位に関しては,樹脂の双極子が酸化亜鉛の仕事関数を小さくするように吸着することから説明され,別の実験によってこの仮定が確証された。電流に関しては,樹脂双極子の吸着と樹脂の充填率増大などの酸化亜鉛粒子一樹脂間の接触モデルを提案し, それにより合理的に説明することができた。
また, 雰囲気の変化 (真空, 乾燥) に対しては, 両者とも値は異なるけれども, 同形の曲線が得られ, 上述のモデルが一層立証された。さらに, 電流変化や酸化亜鉛への樹脂双極子吸着による表面電位変化現象などより, 酸化亜鉛粒子の大きさや樹脂分子の大きさなどを決定することができた。
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