チンパンジーにおける視聴覚間のインターモーダルな認知を,視聴覚見本合わせ課題(AVMTS)をもちいて実験的に検討した。聴覚見本刺激の提示に続いて2つの視覚選択刺激(写真)がモニター上に提示され,被験体は,聴覚刺激に対応する視覚刺激を選択するよう訓練された。この課題を獲得したチンパンジー1頭に「チンパンジーの声・顔」および「トリの声・姿」という新奇な刺激を提示し般化を検討したところ,「チンパンジー」の刺激では般化が見られたが「トリ」の刺激では般化が見られなかった。チンパンジーの同種認知が視聴覚間で統合的に行われていることが示唆され,また被験体はAVMTSの獲得過程で視聴覚刺激間の対応を個別学習しただけでなく,視聴覚モダリティー間の一般的な対応を弁別に反映させていることが示された。
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